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監督からの挨拶

大学入学おめでとうございます。数多くの選択肢があふれる中で、馬術部に興味を持ってくれたことをうれしく思います。

「一鞍是調教(ひとくらこれちょうきょう)」という言葉があります。

馬に乗る経験を一鞍(ひとくら)、二鞍(ふたくら)という風に数えるのですが、「どんな一鞍であっても、良くも悪くも必ず馬に影響を与えるものだ(だからいつでも精一杯乗らなくてはいけない。)」という格言です。 すべての馬との関わりが、馬に影響を与え、良くも悪くもします。そういうやりとりを通じて、よりよいパフォーマンスを求めていくことが調教であり、「馬術」です。

あえて大上段に構えた物言いをすると、私は「乗馬」と「馬術」は違うと思っています。「乗馬」の技術と言った場合には、その一鞍馬に乗ってどれだけの演技ができるかということにすぎませんが、「馬術」とはその一鞍はもちろん、長い時間をかけて馬との意思疎通を深め、パフォーマンスを向上させていくプロセスを指すものです。馬術競技が競うのは、乗馬技術ではなく、馬術すなわち長い時間をかけた調教の成果です。

偉そうに言ったものの、良い調教をするためには乗馬技術に優れていることももちろん重要な要素です。その点、ほとんどの部員が大学から馬に乗り始めている京大馬術部で、特別優れた調教がされているとは言えないかもしれません。

しかし、調教の良し悪しは乗馬技術だけで決まるものではありません。方法の工夫や取り組み方次第では、乗馬技術では劣っていたとしても競技会で好成績をおさめることは十分にありえます。

京大馬術部では、馬術競技の本質は日々の調教にあるという信念のもと、ひとつの大切なルールがあります。それは、最上級生としての1年間は、すべての部員が1頭の馬の責任者として調教に取り組むということです。

競技成績の良否によって担当者を入れ替えるということは決してしません。これは、競技成績を追い求める観点からすれば非効率であることは否定できませんが、先に述べた信念からすると自然な結論だと私は考えています。

日本全国には数多くの乗馬クラブがあり、また、大学馬術部も結構な数あります。お金さえ出せば、あるいは、別に京大ではなくとも、乗馬を楽しむことは簡単にできます。 それでも、どう乗ろうか頭を悩ませつつ毎日馬に乗ることができ、下手くそなりにも馬の調教ということにどっぷりと浸かることができるのは、大学時代だけ、京大馬術部でだけだと思っています。

かつて同期と話した「京大馬術部に入ってなかったら、こんなに馬にはまることもなかったと思う。」という言葉を懐かしく思い出します。自分が魅せられた馬術の魅力を少しでも伝えたい。そこから得られるものはきっと代えがたいもののはずだ。そう信じて、皆さんが門を叩いてくれる時を待っています。

小難しいことを言いましたが、最初は気軽に、馬のかわいさに誘われて一度またがってみてもらえたらと思います。もう一度、と思ってもらえたならば、ぜひ私たちと「馬術」を楽しんでいきましょう。

京都大学馬術部 監督 中村 暢宏